タグマネジメントで変わる計測運用の効率化 ~アクセス解析や広告効果測定の運用をどう省力化できるか~
ちょうど気になっていたタグマネジメントが今回のテーマ。
アクセス解析イニシアチブのセミナーは
いつもテーマ設定がタイムリーでありがたいです。
特に印象的だったのは
コスト削減や工期短縮だけでなく、投資の観点を。
というメッセージ。
「攻めのタグマネジメント」と表現されていましたが、
タグの出し入れが仕方が根本から変わることにより
発想次第で色々な活用法がありそうです。
最近のタグマネジメントツールの中には同時に行動履歴を取得して、
ターゲティングに利用できるものもあったりしますし、
まだまだ広がりが出てきそうな分野だと感じました。
以下、講義メモです。
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<第1部:タグ・マネジメント・ツールとは(入門編)/畑岡大作氏>
【タグ・マネジメントとは?】
●アクセス解析ツールを利用する際の問題点
・埋め込むタグの種類がたくさんある
・開発担当(システム)への依頼が手間
・現在の埋め込んでいるタグの状況がわからない
・外部の人間にタグを確認してもらいづらい
●タグ・マネジメントとは「タグを管理して問題を減らそう」という考え方
→ツールを使わず、Excelなどでタグ情報をまとめ、把握・管理するのもタグ・マネジメント
→しかし、ツールを使わないと解決しない問題も多いので、ツールを使う。
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【タグ・マネジメント・ツールとは?】
●タグ・マネジメント・ツールとは?
・Webページへタグを貼り付けて利用するツール
・Webページに埋め込むタグを一元管理
・管理するタグは、ツールの管理画面で保存/設定
●タグ・マネジメント・ツールの仕組み
1.使用するWebページにタグマネジメントツールのタグを埋め込む
2.ユーザーがアクセスし、ツールのタグが実行される
3.ツールが呼び出され、保存されたタグをチェック
4.発行条件を満たしたタグが発行される
●タグ・マネジメント・ツールのメリット
1.Webページへ埋め込むタグは1種類で良くなる
→「埋め込むタグの種類がたくさんある」が解決
2.システムとタグ管理の切り分けができる
→「開発担当(システム)への依頼が手間」が解決
3.管理画面から常に最新のタグの状況がわかる
→「現在の埋め込んでいるタグの状況がわからない」が解決
4.権限を分けて複数ユーザーで運用可能
→「外部の人間にタグを確認してもらい辛い」が解決
●タグ・マネジメント・ツールのデメリット
・サーバがダウンしていると利用不可能
→ちなみにGoogleタグマネージャとGoogleAnalyticsは同じインフラ
・導入コスト(作業工数)がかかる
→既存タグのリストアップや、ツール側でのタグの設定など
→サイト立ち上げ時やリニューアル時にやると負担も減らせる
・ツールを万全に使いこなすには知識が必要
→応用するには、JavaScriptの知識が必要
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【タグ・マネジメント・ツールの使い方】
※Googleタグマネージャでの例
●大まかな流れ
1.利用登録(アカウント作成)
2.既存タグのリストアップ
3.タグ・マネジメント・ツールのタグ埋め込み
4.タグの設定
5.テスト&デバッグ
6.公開(公開)
●利用登録(アカウント作成)
・GoogleAnalyticsと同様にGoogleアカウントでログインして開始
http://www.google.com/tagmanager/
●既存タグのリストアップ
1.現在Webサイト内に埋め込んでいるタグを「すべて」リストアップ
・ツール名(例:Googleアナリティクス)
・タグ内容(実際のタグHTML)
・埋め込み場所、条件(URL、計測アクションなど)
・使用変数(タグ内に存在する変数)
2.リストアップしたタグの一覧を見て、ツールに移行するタグの選定と設計を行う。
●タグ・マネジメント・ツールのタグが発行するタグをWebサイト内の全ページへ埋め込み
→<body>タグの冒頭に記述
(管理画面の各項目)
●タグ:実際にWebページに埋め込むタグのこと
・フォーマットが用意されていない場合、HTML自由入力可能な「カスタムHTMLタグ」を利用
・タグの中で変数を使用することもできる
●ルール:タグを発行する条件
・全ページでタグを発行する、URLが○○の時だけタグを発行する、など
・マクロを使って条件を指定
・除外条件としても利用可能(○○の場合にタグを発行させない)
●マクロ:ルールやタグで利用できる変数のこと
・具体的には「URL、リファラー、JavaScript変数、DOMテキスト/属性」など
●テスト&デバック:管理画面にログインしているユーザーだけ見ることができる確認用モード
・Googleタグマネージャでは履歴を世代管理可能(昔の設定に簡単に戻せる)
・画面下部に各タグの発行状況が表示される
●バージョン詳細画面から「公開」ボタンを押すと一般公開(押し忘れに注意)
●ツールに移行したタグは既存サイトのHTMLからは必ず除去。
→例えばGAタグだと、直書きのタグが残っているとダブルカウントされる
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【Googleタグマネージャでできること・できないこと】
●GA以外のツールに対応している
→主だったものはリストに用意されている
→それ以外は「カスタムHTMLタグ」を選び、タグのHTMLをそのままコピペする
●サブドメインや複数ドメインでも使える
→複数ドメインで記述が必要なGAのオプション項目としてフォームが容易されている
→複数ドメインに同一コンテナのタグを埋めて使用可能
●同一URLのページでも出し分け可能
→「URL+その他の条件」で設定(ページ見出しに「入力」を含む、など)
●特定のJS関数内からGoogleタグマネージャを呼び出して実行できる
→eventというマクロで呼び出す
<script>
dataLayer.push({'event':'イベント名'});
</script>
●Googleタグマネージャへデータも渡せる
→タグの内容としてマクロが利用できるので、マクロとして登録できる形
(例:特定のidテキスト、JavaScript変数など)であればデータを渡せる
→Googleタグマネージャでの利用を前提とした形式としてデータレイヤー変数が用意されている
●GoogleAnalyticsタグもga.jaとdc.jsどちらも選べる
→「ディスプレイ広告主向けのサポートを追加」にチェックを入れると、dc.jsに。
●GoogleAnalyticsタグのeコマースタグにも対応
→「トラッキングタイプ」でトランザクションを選ぶ。
●ページビュー計測で擬似URLも使える
→「仮想ページ遷移」にチェックを入れて設定。
●カスタム変数も設定可能
→「カスタム変数」にチェックを入れて、スロット/値等を設定。
●イベント発行もできる
→トラッキングタイプで「イベント」を選択。
●特定リンククリック時のイベント発行はJavaScriptの利用が必要(今後、機能としては実装予定)
→現状はカスタムHTMLタグで、JQueryなどでaタグにイベントをbindさせて対応
●複数UAの2重トラッキングが容易に可能
→これまでのような特殊な記述は必要ない。
●ウェブテスト(A/Bテスト)はできない(今後、機能としては実装予定)
→Googleタグマネージャで管理するタグは非同期タグのみ。
同期タグでなければいけないものは動作保証されていない。
●A/Bテストの他にも、タグ内で以下のものは利用できない。
・document.writeを含むタグ
・動機して読み込む必要があるタグ
・ページ内の構造が関わるタグ(例:ソーシャルの共有ボタン出力JS、など)
●クロスドメイントラッキングも一応対応
→_setDomainName、_setAllowLinkerについてはオプション対応されている
→ただし_link()関数関数の自動付与機能は提供されてないので、
現状はカスタムHTMLタグで、JQueryなどでaタグにイベントをbindさせて対応。
●タグの呼び出し順番はランダム(指定はできない)
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【まとめ】
●Webページに埋め込むタグを一元管理するためのオンラインツール
●Webページに埋め込むタグはツールのタグだけでOK
●その他のタグはツールの管理画面で管理
・システムと切り分けができます。
・管理画面から常に最新のタグの状態がわかる
●権限を分けて複数ユーザーで運用可能。
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<第2部:タグマネジメントは慎重に/NTTコムオンライン 久本英太氏>
「コスト削減」と「新たなコスト」のバランスを取ることが必要。そして「投資」の観点を。
1.現状把握/ケース・スタディ
2.問題点や落とし穴
3.導入の考え方
4.ソリューションを活用するとは何か?
5.まとめ
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【1.現状把握/ケース・スタディ】
●立場によってタグマネジメントに求める業務改善効果は違う。
→エンドユーザはタグの追加変更について、代理店は導入コストについて。
→タグの表示速度についてはそもそもニーズが弱く、あまり効果も感じない。
→「苦い経験」がどこにあるかで効果の感じ方が変わってくる。
●タグ導入期間は44%が「1週間以上かかる」と回答
●とある会社ではタグ張り替えに開発者コストが月平均120時間かかる
●TEI手法によるROI試算ではROIは128%、改修期間2.6ヶ月
→費用28万ドルに対して、総便益は64万ドル。36万ドルの収益。
●旅行系サイトAの事例
・ソースコードに一切の追加記述をせずにリコメンデーション広告の運用を可能に。
→タグマネージャ用のタグも入れられない。
・元々入っていたVisionalistタグの呼び出し時に、別タグを読み出す仕組みを構築。
●人材系サイトBの事例
・セキュリティポリシーの厳しいページへのタグ挿入を簡単にできるように。
・セキュリティ管轄部門に対して、運用ポリシーや通信方式の確認など
詳細に説明して信頼を得る必要がある。
●ここまでのまとめ
・立場によって評価は変わる。
・工数とコスト削減はできそう。
・背景によって微妙にニーズは違う。
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【2.問題点や落とし穴】
●そもそも何を改善しようとしているのか?
→よく取り沙汰にされるのは「実装」の部分だが、「動作検証」についてはあまり焦点が当てられない。
→多種のブラウザ、デバイスチェックや、HTML5など。
●体制構築、特に責任者を明確にしておく必要がある
→対応自体に技術理解が必須。
→常に最悪のケース(サイトが止まる)を想定しておく。
→組織が変わっても引き継ぐができるか?
●タグマネジメントの先にあるタグが悪さをすることがある
→情報セキュリティ規程の遵守が必要。
→信頼関係の中で業務が行われることが実は一番の業務改善。
●技術要素の理解が必須
→Ajax(非同期処理)の理解
→実行順序が明確に定義されているタグまで非同期処理に入れると大変なことに。
→サイト側のjqueryをアップデートしたら特定のタグが動かなくなったりした場合など
原因の切り分けや、事象再現等の基本的な対応が可能か?
●ここまでのまとめ
・改善のポイントは結局"人"
・責任者の技術理解は必須
・コストの不可視化が起こる(作業が見えなくなる)
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【3.導入の考え方】
●単純なタグ張り替えコスト減以外の「投資メリット」を出せないか?
●タグマネジメントとはソリューションマネジメントである
→フロント側で実施していた動作制御をバック側(管理画面)でできることを活用。
●タグコントロールによるリマーケ出稿量制御
→リマーケタグの出し入れが容易になることで、タグの出し入れで出稿量を調整。
→「タグの接触人数=広告表示人数」
●Javascriptの変数を共通化した連携
→ユーザーの回線を判定して、表示を切り替えなど。
●非同期通信を活用したソリューション連携
→サイト外のDWHに通信をかけ、人(ID)ごとに広告接触回数を変える。
●O2Oソリューションへの活用
→タグマネジメント内でフォーム内にHidden要素としてID情報を埋め込み。
フォーム送信時にID情報も送信し、自社DBと紐付けてCRM連携。
●守りのタグマネジメントと攻めのタグマネジメント
現状:タグを貼るだけ
STEP1:タグ導入を管理(導入箇所の把握、運用フロー構築)
STEP2:タグ導入をマネジメント(導入の効率化)
STEP3:ソリューションをマネジメント(活用)
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【4.ソリューションを活用するとは何か?】
●ベンダーの売り文句に注意
・高度な処理ができるシステムの提供 → そもそも高度な処理が必要?
・ユーザーがよりツールを使いこなせる環境の整備 → ユーザー側にコスト転嫁しやすくなる?
・他システムと連携いた便利なプラットフォームの構築 → 解約されにくくなる?
●ソリューション活用とはソリューションとの「対話」
→ユーザー側で咀嚼して、ソリューションを活かしきる。
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【関連URL】
●アクセス解析イニシアチブの活動報告
http://a2i.jp/activity/activity-report/14657
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